• 四国特集②
    ほろっと口どけ、甘いご褒美。
    「和三盆」は手間を惜しまずつくった努力の結晶でした。

    【香川県東かがわ市】ばいこう堂

    今月は四国のつくり手をご紹介します!

     青い海に浮かぶたくさんの島々。こちらは香川県の紫雲出山から眺めた瀬戸内海です。本州・四国・九州に囲まれた瀬戸内海にはたくさんの島があり、その数はなんと700以上。のんびりと穏やかで、時間を忘れてしまうほどの絶景です。今回の四国では、どんなつくり手と逸品に出合えるのでしょうか!

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    ほろっと口どけ、甘いご褒美。
    「和三盆」は手間を惜しまずつくった努力の結晶でした。

     「和三盆(わさんぼん)」って食べたことありますか?ここ数年は和三盆を使ったお菓子も見かけるようになり、名前を知っていたり食べたことがあったりする方もきっといるのではないでしょうか。

    今回お訪ねしたのは、和三盆とその菓子づくりを営む、香川県の「ばいこう堂」。専務取締役兼工場長の黒川晴彦さんにご案内いただき、ばいこう堂の和三盆づくりを学んできました。

    ■きっかけは人助け!?さぬき和三盆のはじまり

     和三盆の歴史は江戸時代まで遡ります。高松藩の命令で砂糖づくりの研究を行っていた医者が、四国遍路の途中で行き倒れになっている人を見つけて治療をしました。その助けた相手が、薩摩の奄美大島出身の砂糖作りの経験者であり、その者から砂糖作りを教わり、サトウキビを育てることになったのが、この地方の「さぬき和三盆」の始まりと言われています。

     また、ばいこう堂では、自社でつくる和三盆を「和三宝(わさんぼう)」と商標登録しています。香川県では古くから「砂糖」「塩」「綿」の三つの特産物が「讃岐三白」と呼ばれ、その三つの宝にかけて「和三宝」と名付けたそうです。

    ■サトウキビからできる和三盆

    >>素朴な甘味がじゅわっと広がる

     空に向かってぐんと伸びる、サトウキビ。2mを軽々と超える背丈なので、遠くからでもすぐに畑を見つけられます。ばいこう堂の和三盆で使っているサトウキビは、すべて香川県産!今回訪問した12月初旬はちょうど収穫期でした。

     「一番うまいとこ!甘いで」と農家さんが差し出してくれたのは、サトウキビ。外側の硬い皮を剥いて、かぶりつきます。じゅわ~っと甘い汁が口いっぱいに広がる!これが和三盆になるの…?と不思議に思いながら、サトウキビの素朴なおいしさに感動。ラッキーなことに、今年(訪問時の2020年)のサトウキビは、甘味がしっかりあっておいしいそうです。

    >>サトウキビづくりは重労働 その1

     サトウキビ栽培はなかなかの重労働です!「草にやられたら、ダメになってしまう」と農家さん。サトウキビがまだ小さいときは、すぐに雑草に負けてしまうのだそうで、除草がとても重要なんだとか!しかも7月に作業するので草は伸びるし暑いしで、話を聞いただけでも大変なことがわかります。

    >>サトウキビづくりは重労働 その2
     また機械で刈り取る前に、手作業で穂先を切ることも行います。サトウキビを押さえつつ、自分の頭3つ分くらい上の高さを鎌でカットするので、少しジャンプしたり反動をつけたりしないとカットできません。わざわざ台を使って切る人もいるくらい手間がかかるのだそうです。

    ▲大型の刈取り機 以前は収穫後に行っていた、皮を取って短くカットする作業もこの機械で同時にできる。

     黒川さんは言います。「サトウキビがあっての和三盆。それを守っていかなあかんという意味では、農家さんを手助けすることも考えてますね。サトウキビの生産組合をつくって、大きな刈取り機を買ったり。ただでさえ重労働で農家さんの高齢化も進んでるので、負担を少しでも減らせるように、うちにできることを協力させてもらってます。」

    ▲サトウキビ農家さん

    ■伝統製法で手間を重ねてつくる

     さて、いよいよ和三盆づくりの工程に移りましょう。まずは、サトウキビを搾るところから始まります。収穫後のサトウキビを機械に通して糖液を搾り出し、その糖液を釜の中で煮詰めていきます。

     煮詰めることでアクや不純物を取り除いていくのですが、アクの量がかなり多いので、この作業はおよそ40分もかかるのだそう。アクや不純物を十分に取り除いたら、余分な水分を飛ばすためにさらに煮詰めます。糖液に竹の棒を入れて持ち上げたときの滴り具合で終わりを見極めるので、長年の経験が必要!煮詰めると「白下糖(しろしたとう)」というものができあがり、これを極寒の中で結晶化させます。

     2週間以上寝かして固まった白下糖は、ほぐして袋詰めし、「押し舟(おしぶね)」にかけます。

     “押し舟にかける”とは、「押し舟」と呼ばれる道具を使い、重石で圧をかけて糖蜜を搾り出す工程。これを一晩行い、袋の中で固まった糖蜜を木槌でたたきほぐし、再び押し舟にかけます。
     そしてまだまだ終わりません!押し舟にかけた袋を取り出し、糖蜜を抜けやすくするためにたっぷりの水を加えて再び押し舟に。この「研ぎ(とぎ)」と呼ばれる工程と「押し舟」にかける工程を約1週間かけて数回繰り返すことにより、徐々に蜜が抜け、白くきめ細かい粒子になっていくのだそうです。こうしてできあがった和三盆を乾燥させ、ふるいにかければ完成!

     一般的な砂糖はほとんど人の手がかからず機械でつくられるそうですが、和三盆の伝統製法はとにかく人の手がかかる!長年の経験が必要な工程もあり、和三盆づくりには多くの職人技が詰まっています。サトウキビを搾るところから、およそ60日はかかるので、こんなに手間と時間がかかっていたことを知ると、より大切で貴重なものに感じられますね。「努力の結晶」って和三盆から生まれた言葉だったりして…!

    >>遊び心も詰まった和三盆の干菓子

     ばいこう堂で人気なのが和三盆の「干菓子」。シンプルなものから、花や動物の形をしたカラフルなものまで様々。こちらは桃太郎がモチーフになっていて、昔話の世界が楽しめます!

     干菓子は、色付けした和三盆を型の中に入れ、指で押し固めてつくります。1日中この作業をするので慣れていないと手を痛めてしまうこともあるそうで、うまく体重をかけながらギュッギュッと均等に押し固めていきます。成型したあとの取り扱いもかなり繊細。丸1日乾燥させたあと、箱詰めや包装も手作業で行います。

    >>ほろほろ食感のやさしいくちどけと甘さ

     和三盆の魅力は、そのくちどけの良さ。口に入れた瞬間にほろほろっと溶け出し、ジュワッと和三盆独特のやさしい甘みと香りが広がります。砂糖なのにそのまま食べられるというのも、和三盆ならでは!

    ■和菓子屋にとどまらず、世界にも発信していきたい

    ▲ばいこう堂 専務取締役兼工場長の黒川晴彦さん

     「昔に比べて和菓子屋も減ってきていますからね。今は和菓子屋に留まらず、美術館や博物館、水族館など、型のデザインをいただいてオリジナルの干菓子をつくることもしています。最終的には海外も視野に入れてやっていきたいと思っていますが、日本の”伝統”だけでは発信が難しいところもあって。砂糖としての特徴は何なのか、他のものと差がないと、なかなか海外で受け入れてもらえない。そのために、どういったことをしていけばいいのか、まだまだ課題は多いですね。」サトウキビをつくる農家さん、伝統製法を守りながら、和三盆の魅力を和菓子屋に留まらず世界にも伝えていく。そんな夢を黒川さんは語ってくださいました。

      仕事の合間やほっと一息つく時間に味わいたい、ほろほろ食感のやさしい口どけ。手間ひまかけてつくり上げる、努力の結晶と甘い幸せをばいこう堂の和三盆で堪能してみては?

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