■五島列島
世界遺産に登録されている五島列島。北部にある新上五島町は「上五島」、南部にある五島市は「下五島」と呼ばれています。古くから潜伏キリシタンが移り住み、信仰が根付く島々です。
■壱岐
長崎県の壱岐島。福岡県と対馬の中間地点に位置しています。中国の歴史書「魏志倭人伝」や日本の「古事記」にも出てくる、歴史ある島。
■対馬
長崎県にある対馬島。朝鮮半島に近いため、古くより大陸との交流の窓口の役割を果たしてきました。韓国と日本を結ぶ、玄関口となっています。
JAPAN FOOD ISLANDSという活動があります。私たちは通称「離島プロジェクト」と呼んでいますが、
離島振興と地方創生を目指し、日本を豊かな食列島にする
を目指した活動です。
日本には、人が暮らす島が400を超え、そこには豊かな自然と食の恵みがあります。島の方々は何代にも渡り、島の食文化や暮らしを育み、伝え続けています。それを応援しようというのがこのプロジェクトです。
実は、久世福商店はこの活動に賛同し、この夏に長崎県の壱岐・対馬を訪問しました。その折に海の幸、島の幸のおいしさに驚いて、これを全国の皆さんに届けたいと思いました。
一方でみなさんがコロナ禍で食材の行き先を失いつつありとても困っている、と聞き、「一日も早く売り場を提供しなくては―」そんな思いに駆られました。それが、「旅する久世福e商店」立ち上げの一番の契機となりました。ですから、島は「旅する久世福e商店」の生みの親でもあります。
五島列島には、長崎や天草の潜伏キリシタンの里として世界遺産に登録された集落があり、島にはいくつもの美しい教会があります。そして、海。オレンジの夕陽がゆっくりゆっくり海に落ちていく様に、思わず立ち尽くしてしまいました。
海に囲まれた島だから、お魚がおいしいのはもちろんですが、天然のお魚だけではなく養殖にも意欲的に取り組んでおり、牡蠣やクロマグロ、ブリなどなど、おいしいものがたくさん。
そして特筆すべきは「あごだし」です。秋の北風にのってやってくる飛魚(あご)を「焼きあご」にし、だしをとる。五島の「焼あごだし」は上品な旨み、風味豊か、黄金色のすき通った出汁が特徴で、毎日の味噌汁や正月の出汁として重宝されています。
また、五島列島は、中国から日本にうどんが伝来した土地と言われており、この土地に根付いた五島うどんの製麺屋さんが何軒もありました。びっくりするほど「つるつるっ!」。乾燥を防ぐために椿油を塗ることで、こののどごしが生まれます。
おやつには「かんころ餅」。
かんころは干し芋、昔からこの地ではさつま芋を干し芋にして保存し、大切に食べてきました。その干し芋を蒸して戻し、餅に練ったもち米と混ぜて作ったのがかんころ餅です。「かんころ」がカトリック信者の伝統的な食でもある、といういわれを知って食べると、また格別です。
五島列島が世界遺産の島であるなら、壱岐・対馬は日本の神話の島々。
『古事記』や『魏志倭人伝』までさかのぼります。日本を護ってきた、という人々の自負が今も感じられる、神々が宿る島です。
絶品あなごやうに、伊奈さば、するめいかなどの、海の幸がとにかく素晴らしい。そして見渡せば、壱岐オリーブや約35万本にも及ぶシイタケの原木栽培など、チャレンジャーがたくさんいらっしゃいます。対馬紅茶の作り手や、対馬に一軒しかないお醤油屋さんにも出会いました。
壱岐、対馬のみなさんは、割とシャイな方が多いとお見受けしました。でも、一度心を開いてくださると、どこまでも温かい。島を訪問した時、ちょうど台風とぶつかって、一晩ホテルも停電したことがありました。心細いでしょうと、生産者の方がホテルまで差し入れを持ってきてくださったときには、お心遣いにほろり。
五島うどんや島すりみなど島の伝統的な食を伝える産品があるかと思えば、新しい感性でのモノづくりをされている作り手にも何人も出会いました。
五島牛、しまさざなみ鶏や、地元の自慢の産品を使ったプレミアムカレー、地元の食文化を伝えたいという椿鯖スープ(これは日本中探してもここだけでしょう!)、こだわりの鯛茶漬け、レオタードの海女さんが獲ったウニを使ったアヒージョも。海水の冷たさが伝わり、長時間潜れないレオタードで海に潜ることによって、乱獲を防ぐのだそうです。新しい感性が少しずつ花開き、島を盛り上げていきたいと思う気持ちがひしひしと伝わります。
漁師さんや塩作り職人さんなど、海の産物にかかわる方たちは海の変化に敏感です。海水温の変化はすぐに水揚げに直結します。プラスチックも、実際海を見ていて見かけました。こんなところにもプラスチックスープの海の脅威が迫っています。
でも、たとえば五島のやがためさんのお塩は、フィルターによってマイクロプラスチックを除去できている、とのこと。また壱岐では、磯焼けの原因になっているガンガゼ雲丹の加工品を研究し、製品化にこぎつけた作り手に出会いました。食だけではなく、殻の活用も実用化されている。
未来に美しい海を残したい、おいしい海の食文化を伝えたい。そのための試みや努力をしっかりと重ねている生産者のみなさんの熱い思いに、心を揺さぶられました。
「島の9割の子供たちが、高校を卒業すると島外に出ていくんです」島に残りたくても仕事がない、というのが一番の理由。島に残ってほしい、戻ってきてほしい。これは島の人たちの強い願いです。そのために「雇用を作ろう」という思いで頑張っている人たちがたくさんいます。島の中だけではなく、広く販路を求め、東京や海外に目を向けている、視野の広い若手も頑張っています。
五島、壱岐、対馬。それがブランドになる日を目指して。そして、都会の人から「島暮らしってかっこいいね」と言われる日を夢見て。